レモン汁1本147円、画用紙2枚600円、アルコール100ミリリットル800円……。
ワークシートにはそれぞれ値段が並んでいる。6年生2学級の44人が一緒に学ぶ総合学習。子どもたちは電卓を手に、細かな計算をしたり難しい顔で話し合ったり。理科の実験をショー仕立てにして披露するイベント「科学の祭典」の予算書を作っているのだ。
祭典の準備は1学期から進めてきた。「魔法の粉」を使ってお茶を透明に変える、アルコールの爆発を利用して紙コップのロケットを飛ばす――。12の班が工夫を凝らして実験ショーを繰り広げる。本番は3週間後に迫っていた。
資金は自分たちで稼いだ。家から持ち寄った中古学用品や、種から育てた花をバザーで売るなどして4万83円を確保。そこから、施設に寄付する予定の車いす積立金1万円、バザーに使った経費5391円を差し引いた残り、2万4692円をどう生かすか。
この日は、実験に必要な消耗品がどれくらい必要かを話し合い、合計金額をはじき出す。
「アルコールや紙コップなど、必要な消耗品の量は、何をもとに考えたらいい?」
藤本先生が尋ねた。
「時間です」
女の子が答えた。祭典が何時から何時までかがわかれば、その間に行う実験回数の見通しが立ち、消耗品の量を算出できる。
先生は「9~12時の3時間で計算して下さい」と指示した。
別の子は「来る人数」と答えた。
体験してもらう実験では、客の数に応じた消耗品が必要だ。祭典全体の来場者は、下級生と保護者ら約400人。全員がすべての実験を見ることはできないので、それぞれの実験の参加人数を200人と見積もった。
祭典は今年で4回目だが、予算書を作るのは初めて。先生は、かつて6年生が材料の厚紙を買いすぎ、大量に余らせてしまった失敗談も紹介した。
「予算書作りを通じ、計画的にお金を活用することの大切さに気づいてほしい」
バザーも含め、金銭の価値や労働の意味、計画的活用を一連の流れとして学ぶ。先生は、地産地消のおにぎり作りなど、食育を絡めた取り組みでも知られている。
班ごとの話し合いが始まると、先生は一つひとつの消耗品の値段を教えて回った。あらかじめスーパーなどで調べてきたものだ。
電気回路を使う班は、アルカリ電池が8個698円すると聞いて「学校にある充電式の電池では動かんのですか?」。すぐに理科室へ充電式電池を探しに行った。
オレンジの皮の汁で風船を割る班は、値段の高い風船を使うか、安い風船にするかで迷っていた。丸くて厚い風船は派手に割れて演出効果が大きい半面、膨らますのに時間がかかるし割れにくい。細長く薄い風船なら割れやすく値段も安い……。
予算書が出そろったら合算する。合計額が予算をオーバーしたら何かを我慢しないといけない。
時間内にまとまった六つの班の金額は、2520円、1610円、760円……。うん、この調子ならなんとか、予算内に収まりそうだ。
出典:朝日新聞